軽度の白血球数の異常を認めたら

#2. 軽度の白血球数の異常を認めたら

Q

58歳男性、元来健康でしたが数年前の健診で白血球数が従来の5000 /μl前後から急に10500 /μlへと増加し精密検査を受けましたが、白血球数はなぜか正常に戻っており、その他も異常はありませんでした。2年前には逆に3200 /μlと低めでしたが、他の数値も正常でしたので放置していました。今年は更に2900 /μlに減少しヘモグロビンの値も11.8 g/dl (男性正常値13.0-17.0)とわずかながら低下していましたが、今回も自然回復まで様子を見てはいけないでしょうか。

A

 

白血球は、侵入する外敵から体を守る免疫システムにおいて重要な働き

 白血球の正常値は成人ではだいたい3500-9200 /μlですが、体調によりかなり変動するものですし、また年齢によっても異なり新生児や幼児は成人よりかなり多めです。白血球は、侵入する外敵から体を守る免疫システムにおいて重要な働きをします。白血球には主に5つのタイプ(分画)があります。好中球は、白血球の46~72%を占め、細菌や真菌(カビ)を殺すことによって、体を感染症から守ります。21~45%を占めるリンパ球にはT、Bリンパ球、ナチュラルキラー細胞という3種類があり、主にウイルスの感染や異物の排除に働きます。残りはいずれも5%前後の少数成分ですが、単球は損傷した細胞を取りこみ感染微生物から体を守りますし、好酸球や好塩基球はアレルギー反応に関係しています。

 

白血球数の極端な増減は早急に精密検査が必要

 白血球数が極端に減少すると感染を起こしやすくなり、逆に極端に増加した場合は重症の感染症や白血病などの徴候である場合もありますから早急に精密検査が必要です。

 

軽度の白血球の増減の場合は状況に応じた検索

 今回のように軽度の白血球の増減の場合は、状況に応じた検索を進めることで重要な病気を見過ごさないことが大切です。白血球数の軽度増加のみの場合は、持続的であれば多くは体質あるいは喫煙に因る可能性が高く、また一過性であれば軽症の細菌感染やストレス等に因る可能性が高く、また妊娠中も増加している事が多いです。逆に白血球数の軽度減少のみの場合も持続的であればやはり体質、一過性であればかぜ等のウィルス感染に因る場合が多いと考えられます。

 

白血球分画の異常やLDHの上昇、赤血球や血小板も減少の際は血液専門医の受診を

 しかしながら前述の白血球分画に異常があって特定の細胞集団が増減している場合、生化学検査のLDHが上昇して造血の亢進が疑われる場合、あるいは軽度でも血液の他の系統(赤血球や血小板)が減少しているような場合はいずれも血液専門医の受診が望まれます。特に最後の場合は血液を造る骨髄の働きにまで影響を及ぼしつつあるような疾患が潜んでいる可能性も有り慎重な対応が望まれます。今回の場合も軽度ながら貧血を認めますから是非とも早めに専門医への受診が望まれます。

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