加齢のもの忘れと認知症のもの忘れの違いは?

#21. 加齢のもの忘れと認知症のもの忘れの違いは?

Q

63歳女性、最近もの忘れがひどくていよいよ自分にも認知症が訪れたのではと悩んでいます。加齢に伴う場合と認知症に伴う場合とでは対処法が違うと聞きましたが本当でしょうか?

A

 85歳以上では約4人に1人が認知症

 認知症は年齢が高くなるにつれて増加し、85歳以上では約4人に1人が認知症であると言われています。そのため、日本をはじめ高齢化社会を迎えている先進諸国において、認知症は極めて重要な疾患の一つとなっています。 

 

『加齢に伴うもの忘れ』と『認知症に伴うもの忘れ』

 『加齢に伴うもの忘れ』は老化現象の一つで、ある程度は仕方ありません。それに対し『認知症に伴うもの忘れ』は、認知症という脳の病気に因るもので何らかの後天的な脳の障害によって認知機能が低下した故の記憶障害です。もの忘れの特徴としては、『加齢に伴うもの忘れ』は体験したことの一部、例えば旅行に一緒に行った人の事が思い出せないのに対し、『認知症に伴うもの忘れ』では体験をまるごと、例えば旅行に行った事自体を忘れてしまうということです。

 

『認知症に伴うもの忘れ』は進行性

 また、『加齢に伴うもの忘れ』では半年から1年では進行することは有りませんが、『認知症に伴うもの忘れ』は進行性です。こうした変化のスピードは周囲のご家族に確認していただくとわかり易いでしょう。また『加齢に伴うもの忘れ』に比して『認知症に伴うもの忘れ』ではもの忘れに対する自覚症状が乏しいのも特徴です。  

 

認知症の初期症状は記憶障害と見当識障害

 認知症を患った場合、初期の症状として見られるのは、上記の記憶障害の他に見当識障害があります。記憶障害はいわゆるもの忘れですが、見当識障害とは、時間や場所あるいは自分が置かれている状況を認識する事が出来なくなる事を言います。時間の間違えは比較的初期の段階から認められ、今日の日付から月、更には朝昼晩や季節というように進行していきます。次に認識しにくくなるのが場所です。外出した時に、迷子になったり、病院に行っても病院だと認識出来ない、更には自宅や自分の部屋、トイレの場所もわからなくなる事もあります。また人の間違えも他人の場合は早くから見られ、進行すると家族も解からなくなってしまいます。 これらの見当識障害も伴っているようですと単なるもの忘れよりは認知症を疑うことになります。  

 

認知症の約6割はアルツハイマー型認知症

 認知症のタイプには全体の約6割を占めるアルツハイマー型認知症の他、レビー小体型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症、その他の認知症疾患など様々です。

 

まだ特効薬はないが進行を遅らせることは可能

 まだ特効薬的な治療法は存在しませんが、最近は早期発見、早期治療がその進行を遅らせる点で重要とされています。今回の場合も初期の認知症の可能性はありますので、かかりつけの医師に相談して、一度神経内科のもの忘れ外来等の専門医の受診を検討されても良いかも知れません。

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