感染性胃腸炎とは?

#31. 感染性胃腸炎とは?

Q

 5歳の子供が通う保育園でノロウイルス感染が見つかり、感染性胃腸炎として注意の連絡を受けました。普通の胃腸炎とはどう違うのでしょうか?

A

微生物を原因とする感染力の強い胃腸炎

 感染性胃腸炎とは、主にウイルスなどの微生物を原因とする感染力の強い胃腸炎の総称です。例年10月から増加し12月頃をピークとして3月まで多発します。原因となるウイルスにはノロウイルス、サポウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなどがあり、主な症状は腹痛、下痢、おう吐、発熱です。ロタウイルス、アデノウイルスによる胃腸炎は、乳幼児に多く見られます。

 

8割近くはノロウイルス

 昨シーズンの東京都の統計ではノロウイルス(GII) 70.2%、(GI) 8.8%、ロタウイルス12.3%、サポウイルス 8.8% で、ノロウイルスが8割近くを占めていました。これらの胃腸炎は症状のある期間が比較的短く、またウイルスの種類によって異なる治療が行われることも通常はないため、ウイルス検査を行うことなく 流行状況や症状から感染性胃腸炎として診断されることもあります。

 

主たる感染経路は海水中のウイルスを濃縮した二枚貝等の食品

 ウイルスは主にヒトの腸管で増殖し、排泄されたウイルスにより汚染は拡大します。代表的なノロウイルスの感染経路としては、感染者の糞便中に排泄されたウイルスが下水から河川、海に流入し、その水域のカキやシジミなどの二枚貝にウイルスが蓄積されます。この二枚貝の生食や、感染した調理者の手指を介して汚染された食品により食中毒が発生します。また、食品以外の感染経路による大規模な集団感染も発生することがあります。

 

強力な感染力を備えたノロウイルスの消毒は塩素系漂白剤で

 100個以下の少量のウイルス量で人に感染し、患者の下痢便やおう吐物には 1グラムあたり何と100万から10億個もの大量のウイルスが含まれています。潜伏期は24~48 時間で、発症後は通常3日以内の短期間で回復しますが、ウイルスは感染してから1週間程度糞便中に排泄され続けます。ノロウイルスは比較的熱に強く85℃で1分以上の加熱が必要です。 逆性石けんやアルコールの消毒効果は不十分で、塩素系漂白剤の次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度5%)を50~250倍希釈しての消毒が有効です。 

 

予防のポイントは十分な手洗いと加熱調理

予防法のポイントは、①まず十分な手洗いで、特に排便後や調理や食事の前には石けんと流水でしっかり洗いましょう。②カキなどの二枚貝を調理するときは、中心部まで十分に加熱しましょう(中心温度85~90℃で90秒間以上の加熱が必要です)。③吐物や糞便は、次亜塩素酸ナトリウムを使用し、使い捨ての手袋、マスク、エプロンを着用して適切に処理しましょう。

 

治療法は脱水対策と対症療法

 治療法は、特別なものはなく、脱水対策と症状を緩和する処置(対症療法)が主体です。また高齢者では、誤えんによる肺炎にも注意が必要です。

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