同居人にジカ熱の疑いがある場合は?

#29. 同居人にジカ熱の疑いがある場合は?

Q

妊娠12週の37歳主婦です。同居中の姪が先月リオのオリンピック観戦でブラジルに滞在中に不用意にも蚊に刺されてしまったそうです。もしかして私にジカ熱が感染しないかとても心配です。対応法を教えてください。

A

ジカ熱はヤブカ属の蚊を介して広がるウイルス感染で、熱帯、亜熱帯を中心に世界各地で発生しています 

 ジカウイルスはデングウイルスと同じフラビウイルス科に属し、1947年にウガンダのジカ森林で初めて分離されました。ジカウイルス感染症(ジカ熱)はヤブカ属のネッタイシマカや日本にも生息するヒトスジシマカによって「人から蚊」「蚊から人」という感染を繰り返して広がるジカウイルスによる感染症です。ヒトスジシマカは秋田、岩手以南に広く生息していますが温暖化の影響で徐々に生息域が北に広がってきています。 ジカ熱は近年中南米以外にもアジア、アフリカでの流行が確認されています。過去10年間にはミクロネシアのヤップ島、ポリネシアのタヒチ島で大流行し、また2015年からはブラジルを中心に中南米で流行しています。国内では2016年に、海外で感染した7人の発症が報告されています。また一部では血液や精液等の体液を介して直接人から人への感染例も報告されています。

 

8割の人は無症状か比較的軽症で、一見通常の感冒との区別は困難

 症状は2014年に約70年ぶりに国内感染が確認されたデング熱に類似しますが、それよりも軽く、また約8割の人は感染しても症状がありません。潜伏期間は3~12日で、特徴的な症状は乏しいながらも、発疹、結膜充血、目の奥(眼窩)の痛みが診断のヒントとなり、発熱、関節痛、筋肉痛、頭痛も半数近くの症例に認められます。一見通常の感冒との区別は困難ですが渡航暦の聴取も大切です。

 

妊婦が感染すると小頭症児が多発、妊娠予定の女性では8週前からは感染予防に配慮する必要あり

 通常は4~7日間症状が持続し自然に軽快しますが、妊婦がジカウイルスに感染することで胎児が感染した結果小頭症児が多発していることが最近注目されていました。 正確な診断はジカウイルス遺伝子(RNA)や抗体の検出ですが、一般的な検査ではありませんので、地域の保健所や国立感染症研究所等の特別な施設へ相談する必要があります。ウイルスが血液から検出される期間は通常発症後1~2週程度ですが妊婦の場合は11週後にも陽性であった例が報告されています。従って妊娠予定の女性では8週前からは感染予防に配慮する必要があります。

 

特別な治療法もワクチンも無く、流行地域で蚊に刺されないことが最も重要

 治療には特効薬は無く、通常の風邪と同様解熱鎮痛剤程度の対症療法が主体となります。 予防に関しては、有効なワクチンは未だ無く、流行地域で蚊に刺されないことが最も重要です。皮膚の露出の少ない服装や虫除けスプレーの使用も有効でしょう。また、妊娠中は可能な限りジカ熱流行地への渡航を避けたいものです。一部には性交による感染例も報告されていますので、もしパートナーがジカ熱感染の可能性があれば注意が必要です。

 

もし感染の可能性があれば地域の保健所へ相談しましょう

 今回のケースでは、可能性は低いですが姪の方が不顕性感染で、ウイルスが陽性の期間にヒトスジシマカを介してご本人にも感染した可能性はゼロとは言えませんので、保険所へご相談いただくか、あるいは産科で胎児の経過を慎重に見守っていくという対応となりましょう。

内科よもやま話一覧に戻る

このエントリーをはてなブックマークに追加

このページのトップへ