クレアチニンの軽度上昇とは?

#15. クレアチニンの軽度上昇とは?

Q

32歳女性(やややせ形)、以前から健診で毎回血清クレアチニン値の軽度上昇を指摘されていました。今回も0.86mg/dl(正常0.4~0.7 mg/dl)でした。精密検査を受けたほうがいいのでしょうか?

A

クレアチニンとは筋肉中のクレアチンリン酸の代謝産物で尿中に排出される老廃物のひとつ

 クレアチニンとは筋肉へのエネルギーの供給源であるクレアチンリン酸の代謝の最終産物で、尿酸や尿素窒素と同様に血液中の老廃物のひとつです。腎臓でろ過されほとんどが尿中に排出されるため、また腎臓以外の影響は受けにくいうえに簡単に測定できるため、腎臓でのろ過機能の指標として広く用いられています。腎機能が低下していると、尿中に排出されずに血液中に蓄積されますので腎機能の障害の程度に応じて血液中のクレアチニンの値が上昇します。クレアチニンは筋肉運動の代謝産物であるため筋肉量に比例し、一般に女性より男性のほうが10~20%高値になります。年齢による変動はほとんどありません。

 

アルブミンは腎障害の際クレアチニンよりも早期に尿中に認める

 しかしクレアチニンは尿中への排出障害を反映するため、早期には上昇しないという欠点があります。そこで尿中のアルブミンという蛋白の排泄量を尿中のクレアチニンで換算した値をもう1つの指標にしています。アルブミンは腎臓に炎症があったりして障害を受けると比較的早期から尿中に漏れ出て検出されることを利用した検査法です。アルブミンが検出されれば、たとえクレアチニンの数値は正常であっても、慢性腎臓病の初期であると判断されますし、腎機能の低下の予後も推測することが可能と言われています。

 

シスタチンCは筋肉量に左右されないで初期の腎機能低下の検出に有効

 他方アルブミンは検出されないのに、クレアチニンが上昇している場合が問題となります。そこで、クレアチニン以外に、より鋭敏に糸球体のろ過量の推定に使える検査値として最近シスタチンCが注目されています。シスタチンCは、アルブミンより小さな蛋白質で、全ての細胞で産生されるので、クレアチニンのように筋肉の量で左右されません。ごく初期の腎機能低下でも血液濃度が増加すると考えられています。ただ、甲状腺機能亢進症やステロイド使用、喫煙、肥満などでも増加することがあるようです。

 

クレアチニンは腎臓疾患の他に脱水や心不全、筋肉細胞の損傷でも上昇 

クレアチニンは、通常腎機能が50%前後まで低下しないと高値を示さないため、境界域でも異常が潜んでいる可能性はあります。クレアチニンの上昇する場合は腎臓疾患の他に脱水症や心不全、筋肉細胞の損傷等も念頭に置く必要があります。今回のような軽症例でもまず尿中のタンパクやアルブミンの測定、さらにシスタチンCを補助診断として初期の慢性腎臓病の有無を確認することが望まれます。一度専門の腎臓内科に相談されることをお勧めします。

内科よもやま話一覧に戻る

このエントリーをはてなブックマークに追加

このページのトップへ